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Center forSoutheast Asian Studies Kyoto University

研究プロジェクト

科研費プロジェクト

「東南アジア大陸部における土地利用変化のメカニズム−フィールドワークとRSの結合−」
研究代表者: 河野 泰之

研究目的
環境保全と貧困削減は世界のあらゆる地域において愁眉の課題となりつつある。両者は、グローバルなレベルにおいては相補的な関係にあると考えられている。すなわち環境保全は、土地や水、森林などの自然資源の持続的な利用を可能にし、世界の貧困層を形成する農牧民や漁民などの生業を安定させる。また彼らの経済的な生活レベルの向上は、収奪的でその場しのぎの資源利用を未然に防止し、自然環境の修復や保全に貢献する。その結果、今日の農村部におけるさまざまな開発プログラムにおいて、環境保全と貧困削減は車の両輪をなす目標と考えられている。
しかし現場レベルでは、現在、推進されている環境保全と貧困削減が必ずしも相補的に機能していない。そこにはさまざまな問題が内包されているが、両者の最大の対立点は土地をめぐる問題である。環境を保全するためには、それが生物多様性を保護するためであれ、水源を涵養するためであれ、その目的に特化して利用される土地が必要である。一方、貧困を削減するためにも、自給的な食糧の生産のためであれ、現金収入を得るための経済活動であれ、やはりその目的に特化して利用される土地が必要である。世界各地で土地資源の有限性がすでに認識されている今日、グローバルなレベルでの認識とは違って、現場レベルでは環境保全と貧困削減は土地を舞台として二律背反に陥っている。
本研究の全体構想は、東南アジア大陸部を対象として、土地をめぐる環境保全と貧困削減の二律背反という現状を、より長期的な土地利用のダイナミズムに位置づけることにより、環境保全と貧困削減が本来的にもつ相補的な関係を再構築することである。
具体的には、ベトナム、ラオス、中国・雲南省などの複数の対象地域を選択して、第二次世界大戦前後に撮影された空中写真や1960〜70年代にアメリカ合衆国のスパイ衛星によって撮影された画像、近年の高精細人工衛星画像などを利用して、村レベルでの長期的な土地利用の変化を分析し、現地での聞き取り調査や資料調査と合わせて考察することにより、土地利用変化の要因を解明する。また、対象地域間の比較に基づいて、土地利用変化のパターンの類似性と相違性を抽出し、より大きな政治経済的要因と土地利用変化の関連性を解明するとともに、人々の生活・生業実践としての土地利用と今日の環境保全や貧困削減のためのプログラムが誘導しようとしている土地利用の整合性を分析し、相補的な環境保全と貧困削減を実現する土地利用のあり方について提言することも目指している。
プロジェクトのページ
http://sead.cseas.kyoto-u.ac.jp/Landuse/index.html
業績概要
本研究は、東南アジア大陸部を対象として、土地をめぐる環境保全と貧困削減の二律背反という現状を、よ り長期的な土地利用のダイナミズムに位置づけることにより、環境保全と貧困削減が本来的にもつ相補的な 関係の再構築を目指す。そのために、ミクロなレベル(例えば村レベル)を対象として、長期的な土地利用 変化のパターンを明らかにしてその要因を分析するとともに、地域住民による生活・生業実践としての土地 利用と環境保全や貧困削減などの政策プログラムが誘導しようとしている土地利用との整合性を検討する。 平成18年度の主たる成果は以下の3点である。
1) ベトナム北部山地、中国南部・雲南省、ラオス北部山地、タイ北部山地などを対象地域に選定し、空中 写真や高精細人工衛星画像を収集するとともに、土地利用の現状や履歴、社会経済史に関する現地調査 を開始した。
2) 対象地域間で長期的な土地利用変化のパターンを比較するために、森林植生、草地植生、水面、その他 を大区分とし、それぞれを自然被覆と人工被覆に中区分する土地被覆/利用区分のモデルを提示した。 これは、東南アジア大陸部の植生と農業形態の特徴を踏まえつつ、土地被覆と土地利用の両者を統一的な 基準で表現することができる新たな区分である。
3) クラスタリングによる土地被覆/利用単位の調整、デジタル標高モデルを組み合わせた土地被覆判定、 サンプリングによる土地利用履歴調査など、それぞれのケーススタディーに見合った土地被覆/利用を 判読するための技法の開発に着手した。
 
セミナー・シンポジウム一覧 平成20-21年度
  1. 会議名:「ラオスの自然と生業のダイナミクス」研究会
  2. 日時:2008年 7月19日(土) 13:00~18:30/7月20日(日) 9:00~15:00
  3. 場所:東南アジア研究所東棟2階207号室
  4. 共催:総合地球環境学研究所「アジア・熱帯モンスーン地域における地域生態史モデルの構築」(代表 秋道智彌教授)/東南アジア研究所所内研究会「東南アジア大陸山地部研究会」
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