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Center forSoutheast Asian Studies Kyoto University

研究プロジェクト

科研費プロジェクト

「『アフリカの角』地域における紛争・貧困のリスクに対処するローカルな公共性の構築」
研究代表者: 西 真如

研究目的
本研究の目的は、「アフリカの角」地域における在来の社会組織や住民組織の活動を分析することにより、同地域で生活する人々が直面する、紛争や貧困の問題について、(1)当事者たる住民自身が、それらの社会的リスクをどのように解釈しているか、(2)また彼らが、いかなるコミュニケーションの回路によって危機を回避し、持続的な社会関係を構築しようと試みているのかを、明らかにすることである。なお本研究は、紛争や貧困といった社会的リスクに関するものであるが、その目的は一定の指標にもとづいて、リスクの度合いを客観的に測定ないしは評価することではなく、ある社会的リスクの解釈について、当事者たちの間で、どのようなコミュニケーションが進行しているかを分析することにある。
具体的には、エチオピアの南部州グラゲ県で生活する人びとに焦点を当て、次の二つの問題に取り組む。
(a)紛争リスクに対処するローカルな社会秩序の構築
 絶えず民族紛争に直面してきた20世紀のエチオピア社会にあって、グラゲは武力闘争に関与せず、経済活動に専念する勤勉な集団であるとの評価を確立してきた。ところがグラゲの人びとのあいだでは、そのイメージを裏切るかのように、彼らが過去の歴史において、いかに勇敢な戦士であったかを強調する語りが、今日まで広く伝承されている。本研究では、「戦士」伝承を生んだ歴史的な背景や、紛争を取り扱うグラゲの社会組織に関する分析を行う。そして彼らの社会秩序の中に、暴力による解決を求める成員に対して紛争リスクの回避を説得するようなコミュニケーションの回路を見いだそうとする。
(b)HIV感染にともなう貧困リスクの認識と患者へのケア
 エチオピアにおいてHIV/AIDSは、個々人の健康に対する脅威であるだけではなく、社会的な生産・再生産の中心的な役割を担う世代の死亡率を上昇させるため、同国における貧困の拡大という観点からも、重大な脅威として認識されるようになった。本研究では、HIV予防や感染者のエンパワーメントを目的とした、地域住民のイニシアティブに注目する。またその上で、HIV/AIDSを排除することで貧困リスクを低減させようとする地域住民と、HIV/AIDSとともに生きる人びととのあいだで、対話とケアにもとづいた持続的な社会関係が構築される可能性について考察する。