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Center forSoutheast Asian Studies Kyoto University

研究プロジェクト

科研費プロジェクト

「インドにおける労働集約型経済発展と労働・生活の質に関する研究」
研究代表者:代表者 杉原 薫

研究目的
現在、インド経済は大きく変貌しつつある。この 変貌を理解するためには、インド経済の歴史と現状 の理解に根本的なパラダイム転換を迫る議論が必要 ではないか、という論争がいま、国際的に巻き起こ っている。本研究(2 0 06--0 8年度)の目的は、この論争 を踏まえて、インドの経済発展の歴史的起源に関す る従来の見解を再検討し、新しい枠組の構築に貢献 することである。 従来の英語圏での研究は、圧倒的にイギリスとイ ンドの関係を中心に、インド経済史を考えてきた。 例えば、イギリスはインドに産業革命の恩恵をもた らしたとするイギリス側の見解と、バグチのように 「工業の衰退d e i n d u s t r i a l i s a t i o n」をイギリスの工業 化の不可欠の裏面として捉えるインド側の見解は、 いずれもランカシャーの綿布のインド市場への浸透が インドの伝統的繊維工業を衰退させたとする認識を共有してきた。しかし、近年、ティルタンカル・ロイ は、この点に疑義を差し挟み、2 0世紀初頭以降の手 織綿織物業における量的発展や労働生産性の上昇を 主張した。金糸、真鍮製品、皮革、ショール、絨毯 など、在来の技術や伝統的な消費構造に支えられた 多くの労働集約的産業の残存と技術革新への適応力、 雇用創出力も明らかになりつつある。 ロイの議論のもっとも重要な柱の一つは、日本の 研究者との接触の影響で得られた、農業と工業にお ける「労働集約型発展」の概念である。杉原、柳沢 悠、ロイなど、本研究の参加者は、アジアにおける 「労働集約型の発展」がインド経済の理解の鍵を握る 概念であると考えている。本研究では、インド史に 関する実証的な業績のある7名の日本人メンバーが 主として植民地期のデータを再検討し、この仮説の 射程を検証する。 インドのマンモハン・シン首相は、経済自由化の 中心人物の一人であるとともに、すぐれた経済学者 でもあるが、1 9 9 7年のスピーチで「労働集約型工業 化」という言葉を使って雇用創出力のある経済発展 の必要性を説き、現在も、労働集約的な生産を増や すことを訴え続けている。グローバリゼーションやI T産業の発達のなかで、農村の雇用や適正技術の発 達を顧みない一部の見解をいましめているのである。 本研究は、こうした現在の課題の歴史的文脈を明ら かにすることにもつながるであろう。
セミナー・シンポジウム一覧 平成20-21年度
  1. 開催日:2008年12月20日(土)-21日(日)
  2. 研究会名:Joint Workshop on Labour-intensive Industrialisation in South and Southeast Asia
  3. 開催場所:稲盛財団記念館3階中会議室(332室)
  4. 共催:拠点大学交流事業 共同研究9「東アジア地域システムの社会科学的研究」 /グローバルCOEプログラム「生存基盤持続型の発展を目指す地域研究拠点」 イニシアティブ1
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