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Center forSoutheast Asian Studies Kyoto University

シンポジウム・研究会

国内研究会

東南アジア大陸山地部研究会  2005/12/26開催

テーマ 
「ラオス北部における牛・水牛をめぐって」
東南アジアの農村において、牛や水牛などの大型家畜は、生産活動においても、経済的にも、そして儀礼においても欠かせないものであった。近年、農業の機械化により役畜は減少しつつあるが、一方で食肉市場の拡大によりこれら家畜の経済的重要性はますます大きくなりつつある。本研究会は、とりわけラオス北部に焦点をあてて、牛や水牛と人々とのかかわりについて歴史的背景と近年の変容を視野に入れつつ議論したいと思う。
(1) 「ラオス北部における農耕と役畜―耕具に関する調査から」
(2)「ラオス北部の人と水牛:放牧・流通・食肉に関する調査報告」
発表者  
(1) 園江 満 (京都大学東南アジア研究所) (2) 高井 康弘 (大谷大学文学部)
発表要旨
(1)東南アジア大陸部の犂には、中国系の枠型犂とインド系の軛犂双方の影響が見られ、これらの牽引には牛または水牛が使用されている。ラオス北部においては、かつて牛車の輓引では牛も使用されていたものの、犂耕の際には水牛を用いるのが一般的である。報告者は、これまでに犂や耙などの耕具の形状を中心とする分析から、ラオスの北部と中部以南は異なる農耕文化圏に属する可能性を指摘した。今回は、ラオスにおける犂の形状と分布ならびにラオス北部の農耕に関する民族語彙を中心に報告し、今後、ラオス北部の農耕を、耕具に加えて牽畜の使用や管理面から研究を進める上での課題について検討したい。
(2)ルアンパバーンやウドムサイでは、人々は水牛を半野生的に放牧し、役畜、動産、供犠獣・宴のご馳走として重用してきた。しかし1990年代以降、放牧と農業の衝突と放牧制限、牛・水牛売却と農業機械の購入、牛・水牛(肉)流通の広域化、黒タイ・カムなど移住民の屠畜・食肉販売業への参入、鮮肉購入・消費の活発化などの動きが顕著になってきた。ラオス北部における人と水牛および牛との関係は、まさに急変しつつある。この過渡期・急変期における諸様相に関する報告に基づいて、それらの統合的把握に向けた展望について意見交換できればと思う。