本研究の目的は、開発途上国のひとつであるカンボジアの貧困農村において、住民の親族関係・人間関係としての「社会的ネットワーク」「互助組織」「家族からの仕送り」が、貧しい人々の生活の脅威となりうる不測のショックに直面することのリスクを緩和し、家計間・家計内でリスクをプールすることに、どのように相互に関連しながら貢献しているのかを、実態調査と実証分析により明らかにすることである。
社会的ネットワークを通じた、家計間での贈与やインフォーマル信用の供与、コミュニティー・ベースの互助制度、出稼ぎ労働者による仕送りなどにより、リスクがプールされているということが、いくつかの先行研究において指摘されているが、これら3要素相互の機能連関についての研究は、ほとんど皆無で、地域性については考慮されていない。
本研究は、リスクのプールに貢献しているとされる複数の要素の機能連関と、その役割についての地域性を考慮している点で独自性があり、当該分野の研究の進展にとって大きな意義があると考えられる。
また、社会的ネットワークと互助制度、仕送りを通じた、家計間・家計内の贈与・インフォーマル信用交換がどのようなメカニズムで、どの程度、貧困緩和に貢献しているのかを明らかにすることは、より有効な農村の貧困緩和策(たとえば、小口健康保険制度)を考案することに役立つと考えられる。