本研究は、日本国内およびタイで地域研究情報資源共有化に取り組む研究者間の議論を通じて、地域研究情報資源共有化の促進を図ることを目的とする。近年、技術の発展に伴って特にインターネットを利用した地域研究資源を対象としたデータベース公開の動きが広がっているが、類似のシステムを持ち同種の情報を扱いながら、日本とタイで別個に、あるいは個々の研究者や機関単位で進められている例も多く、当事者間で情報交換を行うことにより、それぞれのデータベース公開システムの利便性向上が見込まれ、さらに将来的には公開システム間の連携や統合が期待できる。
また本研究ではさらに、日本国内およびタイで地域研究情報資源共有化に取り組む研究者との情報交換を通じ、誰にでも簡単に利用可能な地域研究資料共有のためのシステムの試作も目指している。これは、特に地方に分散して存在する資料の保存・整理統合・公開を促進するものとして意義深い。たとえばタイの地方寺院が所蔵している貝葉(椰子葉)文書等の中には地域を知る手がかりとして重要なものも多数含まれるが、その利用は研究者個々人の「発掘」作業に負うところが大きい。こうした資料を順次登録・公開できるようなシステムが出来れば、日本を始めとした海外の研究者のみならず、郷土史家などの在地研究者にとっても非常に有用であろう。