マレー・イスラム圏における集団分類概念である「プラナカン」(peranakan)に着目して、分析概念としてのプラナカン概念の有効性を検討する。「プラナカン」は主に「現地化した中国系住民」と理解されてきたが、中国系に限らず「現地生まれ」と「混血者」を併せ持つ存在を指して広く使われている呼称である。本研究課題では、まず事例研究を通じてプラナカン概念を抽出し、マレー・イスラム圏における国民・民族の形成過程をプラナカン概念から捉えなおす。その上で、非主流派と位置付けられた人々の対応戦略としてプラナカン概念を整理し、マレー・イスラム圏の文脈を離れた分析枠組としてのプラナカン概念の有効性を検討する。
現地化した中国系住民に関するプラナカンとムラユ(マレー人)に対する混血者・外来者としてのプラナカンに分けてプラナカン概念を検討する。これまで主に国民や民族によって行われてきた人間集団の把握に関して、国民や民族のように排他的な境界によって区切られるのではなく、しかしコスモポリタンのように個人の自立性の強さに依存するのでもなく、特定の土地と結びついた雑種性を特徴とする人間集団のあり方としてのプラナカン概念を確立させる。この研究を通じて、プラナカン概念が東南アジアに起源を持ち世界に通用する分析概念となることが期待される。