本研究の目的は、NCEP/NCAR、JRA25など、過去50年間にわたる全球再解析気象データ(再解析データ)と、村落での聞き取りで得られた地表面の農業・生業活動が気象から受けた影響(旱魃・洪水などによる農業被害、それに対する農民や地域社会の対応)に関する情報を、農業統計や現地の気象・水文観測データを介して照合・統合することにより、過去にさまざまな地域・地点で起きた旱魃などの事象がどのような広域大気循環下でもたらされたか、その因果関係とメカニズムを明らかにすることにある。
再解析データは、そのデータ構造や時空間解像度において、数値シミュレーションモデルによる温暖化予測結果との類似性が極めて高い。再解析データによる気象条件と地表面の現象との関係を分析し、その結果を蓄積することにより、温暖化気候下でどのような事象が生じるか、具体的に論じることが可能になる。本研究は再解析データと人間活動履歴との照合を行い、その事例を蓄積しようというもので、将来の気候変動が地域社会に与える影響を評価し被害軽減策を検討する上で大変意義深い。
本研究の最終成果としては、「再解析データによる広域気象条件・大気循環」「観測による各地域の気象条件」「各地域の農業被害」、および「地域社会の対応」という4つの要素を関連付けてまとめた事例集を編成する予定である。この事例集は、数値シミュレーションモデルによる気候変動予測結果に基づいて将来起こりうる農業被害を予測し、さらに被害軽減策を策定する際に役立つものと期待される。