京都大学東南アジア研究所ナビゲーションをスキップしてコンテンツへ 日本語 | English
サイトマップ | ローカルページ
Center forSoutheast Asian Studies Kyoto University

共同利用・共同研究拠点

共同研究 (タイプⅣ: 萌芽型)

「東南アジア地方自治論の構築――タイ、フィリピン、インドネシアの自治体サーヴェイを基に」
研究代表者: 西村 謙一(大阪大学・国際教育交流センター)
(実施期間:平成23年度~平成24年度)

研究概要

本研究は、平成23年度の半ばにタイ、フィリピン、インドネシア3カ国で実施する地方自治体サーヴェイ調査で収集するデータをもとに、東南アジアにおける地方自治論を構築するのが目的である。

 平成23年度前半は、質問票のうち、地方政府の自律性と住民参加に関する部分の改訂、そのための海外調査を実施する。データが揃う後半期にはデータ・クリーニング作業を行う。平成24年度は、SPSSによるデータ分析作業を行うほか、データ解釈のため、海外で補足調査を行う。

研究目的・意義・期待される効果

インドネシアサーベイ研究所にて、左から、岡本・京都大学准教授、LSI常務理事長、ワヒュー博士

フィリピンの世論調査会社Social Weather Stations(SWS)にて、前列左から、SWSのサンドバル氏、リクダイン氏、後列左から、永井・大阪市立大学教授、西村・大阪大学准教授、小林・成蹊大学准教授

本研究は、上記3カ国において、地方政府の自律性と住民参加の関係が地方自治ガバナンスの質にどのような影響を与えているのか、その要因、パターン、制約条件の抽出を目的とする。具体的には、科研基盤研究A(海外学術)「東南アジアにおける地方自治サーヴェイ調査――タイ、インドネシア、フィリピンの比較」(研究代表者:永井史男)で平成23年の夏から秋にかけて実施される社会科学的な大規模調査で得られるデータを使い、社会調査法と統計学の方法論に従って、地方自治パフォーマンスに影響を与える地方政府の自律性と住民参加のあり方を規定する要因について分析を行う。

従来の東南アジアにおける地方自治や地方分権の研究は、もっぱら公式の制度を静態的に分析する研究や、特定の自治体に絞ったモノグラフ的な研究が多かった。公式制度の理解は重要だが、自治体のパフォーマンスはそれだけでは決まらない。また、特定の自治体研究はそれ自体としては一般性に欠ける。本研究は、大規模な自治体サーヴェイ調査を実施することで、上記の問題を克服する試みである。こうした研究はフィリピンとインドネシアでは初めて、タイでは2回目の試みであり、3カ国比較という点でも大きな研究上の意義を有する。

期待される主な成果は、(1)3カ国それぞれにおける住民参加の際立った特徴と共通点、(2)3カ国における地方政府の組織的自律性の異同、(3)3カ国における地方政府の自律性と住民参加の関係にみられる特質、などを統計学的に提示することである。

研究成果概要
23年度前半は、質問票の中の地方政府の自律性と住民参加に関する部分を改訂した。そして、フィリピンとインドネシアでは、両国の世論調査会社(フィリピンのSocial Weather Stationおよびインドネシアサーベイ研究所)と調査委託契約を締結し、調査に入った。フィリピンでは、ランダムサンプリングで抽出した300の市・町の首長と計画開発調整官を対象に面接調査を行い、24年2月半ば時点で首長は約9割、計画開発調整官は100%近い回収率となっている。インドネシアでは、ジャワ島内の113自治体の官房長に対する面接調査と、全国の約500の市・町の首長を対象とした郵送調査を行い、官房長対象の調査では9割の回収が見込まれているが、首長対象の調査は回収率が低く、フォローアップを行っている。タイでは、本研究組織メンバーの永井・大阪市立大学教授と籠谷・関東学院大学教授が参加した「タイの中央-地方関係」(アジア経済研究所)で使用した質問票の改訂を目的として11月に現地調査を実施した。