東・東南アジアにおけるポップカルチャーの研究の大半は、文化的プロダクトをテキストとして理解し解釈することに専念してきた。それは、ポップカルチャーの実践と意味について重要な情報を提供してきた。しかし、東・東南アジアにおけるポップカルチャー市場の近年のドラマチックな変化にもかかわらず、こうした文化的多様性の組織化については注目されてこなかった。文化産業において今日顕著な共同制作やそれに基づく市場のメカニズム、そしてそれらが持つ意味について研究対象としてほとんど顧みられてこなかった。
本書は、こうした既存の研究の限界を超え、東・東南アジアにおける共同制作・コラボレーションの実証研究を行い、文化産業と地域の複雑な相互関係を分析するための地域的枠組みを提示する。
本書の貴重な貢献は、以下のようなものである。第一に、共同制作の事例を記述・記録した初めてのコレクションである。したがって、これまでほとんど研究対象とされてこなかったパターンやプロセスに切り込む研究である。第二に、本書は共同制作・コラボレーションが行われる多様な事例を扱う。これにより共同制作パターンやコラボレーションが行われるコンテンツについての多様性を提示する。第三に、本書は、政治学、人類学、経済学、社会学、メディア研究、カルチュラル・スタディーズといった多分野の研究者によるコレクションである。それにより、コラボレーションの研究における多分野的アプローチの有効性について論じることができる。1