近年、日本の村人たちは、近代化による農村に蓄積されてきた知識・経験の軽視問題を自覚的に捉え、経済開発と同様あるいはそれ以上に、地域の文化や歴史、暮らしの知恵が、「地域で生きぬく」ための精神的支えとなることを再評価している。バングラデシュ、ミャンマー、ラオス、ブータン、日本の農村開発関係者が、ワークショップやPLAで相互啓発的に各国の置かれた状況を自覚し、農村開発のパラダイムシフトの意義と可能性を比較検討することが本研究の目的である
経済偏重のグローバリゼーションによる文化均一化に対抗し、農村文化の独自性の意義を自覚的に確立していくためには、異文化・国際的ネットワークへの参加は必須である。農村の生業や文化のあり方の新しい価値の創出が求められている。研究者には、ネットワークの構築とともに、実践的活動を支援し、「協働研究」として新しいパラダイムの創出と実践をリードしていく役割が期待される。本研究の意義は「実学としての地域研究」を事例的に展開することにある。
本研究では、2010 年度は、亀岡市保津町にて、本年度の2011 年度は山口県阿武町にて草の根の農村開発に関する国際会議が、また、他の研究プロジェクトとの合同の研究会が各種企画された。日本の農村が抱える問題と地域再生の取り組みについて、PLAによる調査をミャンマー、ラオス、ブータン、日本の関係者が共同で行い、それぞれの国の経験を比較しつつ、草の根国際ワークショップで相互啓発的に分析を行った。2011
年に招聘された海外客員研究員Khin Oo 氏は、本研究での成果をもとにミャンマーにおける将来の農業・農村開発モデルに提言を行った。ミャンマー、バングラデシュ、ラオス、ブータン、日本における、住民組織、NGO、NPO、研究者の草の根の国際協働研究ネットワークが構築され、地域研究の新しい可能性が具体的に提示された。