共同研究 (タイプIII: 資料共有型)
「フィリピンにおける人口問題と開発政策――新聞・官報等逐次刊行物を利用した調査研究」
研究代表者: 鈴木伸隆 (筑波大学・大学院人文社会科学研究科)
(実施期間:平成23年度~平成24年度)
- 研究概要
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フィリピン地域研究遂行上、日本では1930年から1945年までの新聞資料が欠落しているという問題を抱えている。本研究では当該期間の資料未整備を補完すべく、英字日刊紙the Tribune(1930-1945」を米国コネール大学から購入し、東南アジア研究所所蔵の新聞・官報等逐次刊行物と併せて、植民地期から独立準備政府期、さらに戦後独立期にかけての開発政策の展開を人口問題の視座から分析する。
- 研究目的・意義・期待される効果
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本研究の目的は、戦前から戦後にかけてのフィリピン開発政策を通時的に俯瞰し、20世紀初頭より公衆衛生や生活環境の向上に伴い急増したフィリピン人口が、開発政策に与えた影響を具体的に考察することにある。カトリック教徒が大多数を占めるフィリピンでは、社会や教会勢力の抵抗もあり、政治的に人口規模を抑制することには多くの困難が伴う。戦前には土地と人口の不均衡が顕在化し、小作問題や労働争議が発生した。人口問題は社会不安を惹起する深刻な政治課題であった。戦後も生産力と雇用創出を上回るペースでの人口増加が続き、貧困層が人口の大半を占めている。フィリピン開発政策にとっては大きな足枷である。以上の歴史的変遷を考慮しながら、本研究では、フィリピンの人口増加が開発政策にもたらした影響を包括的に検討する。今回英字日刊紙the
Tribuneの入手により、従来研究が手薄であった独立準備政府期(1935-1946)の考察が可能となる。本研究の意義としては、購入予定資料により20世紀前半の資料的空白を、東南アジア研究所が埋めることが可能となり、歴史・文化領域での豊富な蓄積(フロンダコレクション、オカンポコレクションなど)と相乗効果が期待できる。期待される成果であるが、フィリピン開発政策は、戦前から戦後にかけては宗主国米国との外交関係、さらに70年代以降になると世銀やUSAID、NGOといった国際援助団体等の影響力が支配的であると言われてきた。ところが、近年フィリピン人エリート政治家の意思決定の優位性や自立性を指摘する研究も散見される。本研究も、こうした新たな知見を総合し、斬新な視点でのフィリピン開発政策の歴史的実態解明が期待できる。
- 研究成果概要
- 初年度の計画は、資料購入と研究会による調査研究の実質化にあった。資料に関しては、今回米国コーネル大学クロッチ図書館所蔵の 「the Manila Tribune(1930~1945)」のマイクロフィルム(全109巻)を、予想以上の進捗で購入することができ、図書室に配架できることとなった。これにより、東南アジア研究所が所蔵する「the
Manila Tribune(1898~1930)」に続く、20世紀前半の新聞資料の空白を埋めることができた。
一方、研究会活動では、計3回の研究会(京都2回、京都大学東京品川オフィス1回)を開催し、のべ6研究発表を行った。内1回は、メンバーでは手薄な時期である独立準備政府期の経済政策について、外部から識者を招へいし、情報共有を図った。さらに社会貧困政策ならびに雇用政策に関する基礎資料収集のため、フィリピンでの現地調査を行う一方、購入マイクロフィルム「theManila Tribune(1930~1945)」と併せて、フロンダ・オカンポ両コレクションの閲覧を重点的に行い、調査資料の読みこみを前倒しして開始した。
以上のことにより、資料の未整備に関しては調査開始数カ月後に所期の目的を達成し、次年度に向けた調査の実質化の道筋をつけることができた。
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