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Center forSoutheast Asian Studies Kyoto University

共同利用・共同研究拠点

共同研究 (タイプIV: 萌芽型)

「ハノイ圏都市形成過程と持続型生存基盤」
研究代表者:米澤 剛(大阪市立大学・大学院創造都市研究科)
(実施期間:平成22年度~平成23年度)

研究概要

ベトナム国首都ハノイの19世紀から21世紀に至る都市形成過程について、伝統的都市形態から現在の「近代」都市形成への推移、自然地形・環境、地下構造、紅河デルタの役割などと社会・住民組織の営みを重層的に俯瞰し、4次元時空間分析を中心にした地域情報学的手法により都市ハノイ像を総合的に解明する。特に、本課題では都市における持続型生存基盤を「水」の視点から検討する。

研究目的・意義・期待される効果

作成したハノイ旧市街地のGISポリゴンデータ

GISを用いた旧市街地の3次元表示

本研究は、ひとつは都市基盤共同体変遷とコミュニティ変容の研究であり、特に1831年以降の伝統的集落から現在の「近代」都市形成への推移をフランス統治期以前、統治期とそれ以降に分けて解明する。都市基盤共同体変遷の時空間マッピング(都市基盤共同体変遷図の構築)として、1831年から1888年の旧村落位置・境界推定、人口・住民組織と関連及び歴史的変遷について分析する。二つには、自然環境・現象と地下構造・紅河堤防の研究であり、フィールド調査にもとづいて水文環境、紅河堤防建設などの自然地形・環境調査と地質ボーリング調査による地下構造分析を結合して、歴史的な<ひと>の営みを地下・地表・地上の視点から統合して解明する。

特に、本課題では、都市ハノイを自然地形・環境、地下構造、紅河デルタとの関係で水文環境を焦点にして、過去15年間の都市基盤資料にもとづいて人びとの暮らしのダイナミズムを明らかにし、ハノイ圏の持続型生存基盤を「水」の視点から検討する。

従来からの都市研究は、構築的を中心にした物理環境と集積体、人間集団、現象論的存在などが個別的・独立的に議論されてきたことが問題であり、本研究計画はこれらを統合的に捉え、空間的視点に歴史軸(時間軸)を加えて、ひとつの都市を論じることである。また、都市基盤共同体(旧村落から推移したコミュニティとしての社会・住民組織、生活基盤、文化空間)の変遷を歴史空間、微地形変化・水文環境、地下構造、都市基盤を支える周縁地域の社会空間を包括的に地域研究の視点から研究することであり、新たな研究パラダイムの創出につながる。また、本研究は自然環境・現象と<ひと>の営みの関係を地下構造・地表・地上を統合して都市基盤共同体のダイナミズムを地域情報学的手法により解明し、ハノイにおける持続型生存基盤のあり方の検討に寄与する。

本研究は2年間の最終年であるため、研究成果をベトナムで開催される国際シンポジウムで発表するとともに研究論文としてまとめ、京都大学東南アジア研究所『東南アジア研究」に投稿を考えている。

研究成果概要
今年度は、ベトナムのハノイ全域を中心に、(1)ボーリングデータに地質構造の推定、(2)デジタル標高地図の作成、(3)3次元GISポリゴンデータの作成をおこなった。(1)については、ハノイの郊外を含めた約120点のボーリングデータを用いて、ハノイの地質構造を推定した。(2)については、昨年と同様の手法を用いてDEM(デジタル数値地図)を作成し、作成領域を約10km×10kmと拡張した。(3)については、1:2,000地図に記載された建物データをCADデータとして建物区画地図から抽出し、3次元のGISデータ(ポリゴン)を作成した(地図2枚分)。本研究は、今年度が最終年度となる。2年間の研究をとおして、ハノイ都市圏を形成する基盤データを構築し、それらがどのように変化して都市発展につながっているかを解明した。今後はハノイを広域的な視点でとらえ、都市と郊外の関係からみた都市発展を考慮しながら考えていく必要がある。