本研究は、東南アジアで最も人口集積が大きいメガシティであるジャカルタ大都市圏(ジャボデタベック)を対象として、都市景観の大部分を占める住宅や商業施設、インフラといった建造環境の空間構造を明らかにすることを目的とする。とりわけ、独立以後から現在にわたって急増してきた人口がどのように都市に定着したかを、彼らの居住環境の変遷に焦点を当てて分析する。
具体的には、(1)ジャカルタ大都市圏レベルで土地利用データの収集および作成をおこない、建造環境の空間分布を住宅、商業施設、工場など機能別に描き出す。(2)居住エリアについては、住宅や街区組織の形状など物理的な特性に基づいて複数のタイプの居住区に分類し、それぞれの空間分布を作成する。(3)各居住区毎に都市化のプロセスやライフスタイルを調査し、独立後に多様な居住環境が形成されていく過程を理解する。
東南アジアには人口1,000万を超えるメガシティは複数あり、今後数十年は、さらなる人口増加が見込まれている。どの都市でも人工物の集積が著しく、中間層や富裕層をターゲットにした新興の住宅地開発は、従来の居住環境を大きく変えつつある。しかし、持続可能な都市の観点からは、都市に既に内在している環境や文化を生かした都市づくりが不可欠である。したがって、複雑に変化する大都市の居住区を、既存の土地利用分類より高い解像度で分析することで、今後の都市化の行方を推察するだけでなく、持続可能な都市づくりに向けて、ローカルな建造環境や居住文化が持つ利点を提示することに貢献する。
▲ページトップ