マレーシアが1982年に開始した東方政策は、集団主義や勤労倫理をはじめとする北東アジア社会の諸価値に学ぶことでマレーシアの経済発展をめざすものであり、これまでに東方政策のもとで1万3,000人に上るマレーシア人が留学や産業技術研修のために日本に派遣された。本研究では、30年にわたって国策として進められてきた留学生派遣事業が、マレーシアと日本、ひいては東南アジアを含む東アジア地域における産官学ネットワークにどのような影響を及ぼしたかについて検討するとともに、東方政策の意義が変質しつつある状況にも着目し、マレーシアにとっての東方政策の意義や、東方政策の継続的な実施を可能にしたマレーシア社会の背景や国際情勢についても考察する。
30年の長きにわたって継続的に実施されてきた東方政策を評価することで、国際的な教育・研究交流の促進が社会に与えるインパクトについて実証的に解明することができよう。また、本研究の実施自体がマレーシアと日本の教育・研究交流を促進し、さらには地域研究者による研究対象国への政策提言のあり方の検討にも役立つものと考えられる。加えて、本研究に携わる共同研究員の専門分野は政治学、経済学、文化人類学、社会学と多岐にわたっているため、多角的な観点からの東方政策の評価が期待できる。
▲ページトップ