東南アジアを含むモンスーンアジアの棚田では、近代農業技術が展開しきれない条件下で、各地の生態環境に応じた持続的な農法が存在し、多様な稲作文化を形成している。伝統的な農業や文化風習、生物多様性の保全を目的に国際連合食糧農業機関(FAO)が認定する「世界農業遺産(GIAHS)」に新潟県の佐渡と石川県の能登が選定され(2011年6月)、アジアの棚田と伝統的な農法が注目されてきているが、フィリピンのイフガオの棚田が危機遺産に指定されるなど、棚田の保全が危ぶまれているところも少なくない。
本研究は、日本とアジアの棚田稲作の現況と課題について、資源循環や環境調和、生物多様性、農村開発などの視点から調査研究を行い、比較・分析を通して、それらの農法の特徴を明らかにすることを目的にする。さらに、伝統的農法の継承に配慮しながら、現代農業技術と組み合わせた持続的な農法および棚田の保全と地域開発の方向を構築する。
資源循環型の持続的な農法の構築は棚田地帯だけでなく、アジアの稲作全体に波及する可能性があり、持続的な農村地域の開発ならびに多様な文化の維持・交流に寄与することが期待できる。また、本研究での成果はアジアの棚田や水田農法の調査研究にも適用することが期待できる。さらに、棚田保全と地域開発の実践型研究の成果は、GIAHSやアジアの棚田の維持・保全、稲作の発展と地域開発の指針となりうる。
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