本研究は、上記3カ国において、地方政府の自律性と住民参加の関係が地方自治ガバナンスの質にどのような影響を与えているのか、その要因、パターン、制約条件の抽出を目的とする。具体的には、科研基盤研究A(海外学術)「東南アジアにおける地方自治サーヴェイ調査―タイ、インドネシア、フィリピンの比較」(研究代表者:永井史男)で平成23年から平成24年にかけて実施される社会科学的な大規模調査で得られるデータを使い、社会調査法と統計学の方法論に従って、地方自治パフォーマンスに影響を与える地方政府の自律性と住民参加のあり方を規定する要因について分析を行う。
従来の東南アジアにおける地方自治や地方分権の研究は、もっぱら公式の制度を静態的に分析する研究や、特定の自治体に絞ったモノグラフ的な研究が多かった。公式制度の理解は重要だが、自治体のパフォーマンスはそれだけでは決まらない。また、特定の自治体研究はそれ自体としては一般性に欠ける。本研究は、大規模な自治体サーヴェイ調査を実施することで、上記の問題を克服する試みである。こうした研究はフィリピンとインドネシアでは初めて、タイでは2回目の試みであり、3カ国比較という点でも大きな研究上の意義を有する。
期待される主な成果は、(1) 3カ国それぞれにおける住民参加の際立った特徴と共通点、(2)3カ国における地方政府の組織的自律性の異同、(3)3カ国における地方政府の自律性と住民参加の関係にみられる特質、などを統計学的に提示することである。
▲ページトップ