本研究の目的は、熱帯バイオマスに依存した商品の「高生産性」に注目しつつ、生産から消費に至るローカル/グローバルなプロセスを、時間的・空間的に多様なスケールから検討することで、新しい人間―環境関係論を構築する点にある。商品連鎖の研究については、社会学や経済学における蓄積があるが、本研究では、より生態学的・工学的・人文学的な観点を交えながら、人々の自然資源利用のあり方をより多方面から解明する。
熱帯バイオマスの商品化プロセスの考察にあたっては、生態学・経済学・人類学・国際政治学など、それぞれの学問分野が得意とする分析のスケールおよび対象がある。具体的なスケール・対象としては、ローカル(例えば獣肉や山菜類)、リージョナル(例えばツバメの巣や香木)、グローバル(例えば木材やアブラヤシ)等が想定される。
本研究の意義は、各分野の研究者が、熱帯由来の商品連鎖を考える上で最も有効な空間的あるいは歴史的な分析単位を提示した上で、地理学や歴史学の手法を通じて、異なる時空間スケールの連結や包摂を試みるという、従来にない文理融合型の方法論を創出しようとする点にある。
このように、熱帯バイオマス商品の地域的・国際的フローのメカニズムを多方面から追い、地域と地域をつなぐ具体的な関係性を抽出した上で、分野横断的な議論を通じて理論化を進めることによって、従来の地域特定的な「地域研究」から脱却し、熱帯環境を基軸とした「脱領域的地域研究」の可能性を見出しうると期待できる。
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