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Center forSoutheast Asian Studies Kyoto University

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科研費プロジェクト

「民主化・分権化後のインドネシアにおける地方政治経済構造の変容」
研究代表者:水野 廣祐

研究目的
インドネシアでは1998年のスハルト体制崩壊以降、民主化と地方自治の進展によって、政治経済構造の地殻変動がおこっている。本研究はこうした地殻変動の実態を、特に地方政治に焦点を合わせて分析することを目的とする。その要点は、①地方政治と地方自治体の運営にいかなる変容がおこっているか、②地方政治にどのような勢力が台頭し、③それにより地方の政治経済的利益分配メカニズムにいかなる変容がおこりつつあるかを現地調査に基づき研究することにある。
1998年以降のインドネシアでは、それまでの権威主義的・中央集権的政治運営の反省から、民主化と地方分権化が政治改革の大きな柱となった。1999年に地方自治と地方財政に関する法律が導入され、2004年には二度目の民主的な選挙が無事に行われた。
民主化と地方自治の浸透はインドネシアの政治構造に大きな変化を与えている。第一に地方政治におけるアクターが増加し、新旧勢力の対立が激化している。第二に中央から州・県への権限委譲にしたがって、地方政治において争われる利権は大きくなり、権力バランスが大きく変動している。こうした地方政治の変容について、周到な現地調査にもとづく本格的な研究はこれまでほとんどない。
しかし、今ほどインドネシアの地方政治研究が必要なときはない。それはインドネシアの政治、特に国政の運営が自治体の動向を無視しては理解できないこと、先の地方自治法改正によって2005年から地方首長の直接選挙がはじまることを考えても明らかである。では2004年の総選挙によってどのような人たちが地方政治において台頭したのか。彼らは1999年に地方首長、地方議員として登場した人たちとどう違い、あるいは同じなのか。地方における政治経済権力構造にはどのような変容がおこっているのか。
本研究は、こうした問題関心にもとづき、三年間の研究期間内に以下の課題について成果を出す。
  • ① 2004年選挙によって登場した州・県議会議員についてデータベースを構築し、1999年データと比較しつつ、これら地方エリートの社会学的プロフィールを明らかにする。
  • ② これをもとに地方エリートがいかなる地域横断的共通性と地方的特性をもつかを明らかにする。
  • ③ 地方首長の直接選挙が2005年に一斉実施されることから、地方首長候補者、当選者のデータを収集、そのプロフィールを明らかにし、地方直接選挙における票動員力学を分析する。
  • ④ 2004年選挙以降、地方の政治経済権力構造がどのように変容しつつあるかを、公共事業の発注・受注プロセスに注目しつつ分析する。
業績概要
インドネシアでは1998年のスハルト体制崩壊以降、民主化と地方自治の進展によって、政治経済構造の地殻変動がおこっている。本研究はこうした地殻変動の実態を、特に地方政治に焦点を合わせて分析することを目的とする。具体的にいえば、まず全体的な地方エリートの特徴をつかみ出すために地方議員の社会学的プロフィールを作成する。その一方で幾つかの地方自治体をとりあげて、地方首長選挙、地方政治経済構造を分析する。
地方議員の社会学的プロフィールの作成は、昨年度に終了した基盤研究B(1)「インドネシアの民主化における地方政治の変容」(代表:水野廣祐)(以下、「地方政治」科研)の成果を発展させるものである。「地方政治」科研が主に1999年総選挙で選出された地方議員に関するデータ収集を行ったので、本科研では2004年総選挙で選出された地方議員データを収集している。これまでに73県9市の地方議会のデータ収集を行い、合計3133名のデータ収集を行った。教育水準をみると大卒41.2%、高卒34.8%、年齢層では35歳(1969年生まれ)〜44歳(1960年生まれ)が42.8%と圧倒的に多く、45歳〜54歳(19.5%)、25歳〜34歳(18.1%)、55歳〜64歳(14.8%)と続く。他にも所属政党はもちろん、宗教、職歴など、さまざまなデータを集めたが整理中の段階である。
具体的な地方政治については、2004年から2005年にかけてインドネシアで始めて行われた地方首長直接選挙を分析する一方で、幾つかの自治体について事例研究も行った。全体としては、金権政治の地方への拡散は著しく、自治体主導の公共事業では首長や地方議員のクローニーへのばらまきも顕著である。そして、地方首長直接選挙が導入されたことでこうした傾向は一層助長されているのみならず、地方によっては暴力の行使、メディアの統制など反民主的な動きも目立つようになった。その一方で住民受けする必要性のためにポピュリズム的政策が自治体で目立ち始めてもいる。
フィールド調査一覧
  1. 調査期間:平成18年7月16日-7月26日
  2. 調査地域:ジャカルタ、ゴロンタロ州
  3. 調査内容:博士論文用調査
  4. 研究者名:岡本正明