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Center forSoutheast Asian Studies Kyoto University

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拠点大学交流事業

日タイ拠点大学事業
  社会科学分野
東アジア地域システムの社会科学的研究

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開始年度

   1999年度(平成11年度)

組織

      
  日本側 相手国側
事業主体 日本学術振興会(JSPS) タイ学術研究会議 (NRCT)
拠点大学 京都大学東南アジア研究所 タマサート大学・チュラロンコン大学
実施組織代表者 水野広祐・
東南アジア研究所長/教授
Surapon Nitikraipot・
タマサート大学長/教授
コーディネーター 水野広祐・
東南アジア研究所・教授
Surapon Nitikraipot・
タマサート大学長/教授
Supan Chantavanich
チュラロンコン大学アジア研究所長/教授
協力大学 東京大学・東洋文化研究所/社会科学研究所
名古屋大学・大学院国際開発研究科
京都大学・大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
人間文化研究機構・国立民族学博物館
同志社大学・政策学部
政策研究大学院大学
チュラロンコン大学
マヒドン大学
シラパコン大学
チェンマイ大学
国立開発行政大学院

研究の背景・目的

本プログラムは、近年における東アジアの地域化と地域主義の進展、経済連携構想に見るような日本の東アジア政策の展開を念頭におきつつ、「東アジア地域の社会科学的研究」を大テーマに日タイ拠点交流を実施し、(一)このテーマの理解に資する共同研究プロジェクトを推進し、(二)日本、タイにおける東アジア研究の研究拠点を形成し、これをハブとする日本、タイ、さらに東アジアの社会科学者の交流を実施することを目的としています。

東アジアの地域形成は、ヨーロッパ地域統合のように共通の政治的意志によって「地域主義」として地域統合を推進したわけではなく、市場の力によるインフォーマルなネットワークの拡大と深化、地域的な生産・流通のネットワークの拡大と深化によってもたらされ、「地域化」として進展しています。

このような地域的な経済発展のなかで、各国において都市中産階級が継起的、波状的に形成され、人、モノ、カネ、情報がグローバルにも地域的にもかつてとは比較にならない規模と速度で流通しています。これらの変化により、東アジアの地域秩序はいまどのように変容しつつあるのでしょうか。本研究は、ヘゲモニー、ネットワーク、市場連携、人・モノ・カネ・情報の流動、「企業家精神エンタープルヌールシップ」、さらに変貌する「家族」を鍵概念としつつ、日本、タイの社会科学者を中心とするインターディシプリナリーな共同研究によって明らかにすること、そうした知的交流によって日本、タイに東アジア研究の拠点を形成し、知的共同体を構築することを目的としています。本研究はさらに、2006年度より経済史の立場からの本格的な検討をおこない、東アジアの地域システムの過去、現在、未来の統一的な把握を試みる予定です。

研究テーマ

共同研究6「市場と経済連携」
アジア経済は1997年の経済危機以降、急速にその連携を強め、2国間、多国間経済連携協定が次々と生まれようとしています。アジアは欧米への依存を低め、アジアの中での連携の強化をはかっています。ことにASEANを中心に中国、日本、韓国との連携が今後重要となっています。こうした経済連携について、社会経済的観点から、各国専門家との共同研究により、どのような連携が市場を通じて最大の効率をもたらすのか、アジア各国にどのような影響を及ぼすのかについて、明らかにすることが本研究の目的です。
共同研究7「東アジアを拓く人達:新しい東アジア政治経済・社会・文化モデル構築」
近年、東アジアにおいては、中産階級の擡頭、政治経済制度改革、経済連携の進展のなかで、さまざまな新しい「企業家」entrepreneursが登場しています。たとえば、タイのタクシン首相は、CEOとして新しい政治指導者のモデルを提出しました。インドネシアの「やくざ」組織のなかには、選挙政治の定着とともに、集票ビジネスに進出しているものが少なくありません。また地域的な文化商品市場の拡大と発展の中で、新しい文化商品の開発が行なわれています。ではこうした新しい企業家はどのような人たちなのでしょうか。かれらはどのような「可能性」を見つけ、どのような活動を行っているのでしょうか。それにはどのような意義があるのでしょうか。本プロジェクトはこれを明らかにすることによって、東アジアの社会文化政治経済的変容を国民国家のレベルと地域のレベルのふたつで理解することを目的としています。
共同研究8「変貌する『家族』」
グローバル化の中でいま大きく変容しつつある東南アジアにおいて、「家族」にどのような変化が見られるのでしょうか。本プロジェクトでは「家族」が東南アジアにおいて、法的、イデオロギー的にどのようなものとして構築されたのか。またその実態はどのようなものなのか。これらの問題を地域、民族、階層などの偏差を考慮しつつ、歴史的に、また比較論的に、考察することを目的とします。 これまでの、「核家族」や「屋敷地共住集団」、「家族圏」の議論は、東南アジアにおける「家族」の特徴として、家族の外延が必ずしも明瞭でなく、二者関係の累積として社会関係のネットワークが家族から外へ広がっていることをあげてきました。しかし、そういった議論は、婚姻や相続を含む家族をめぐる制度とその変遷、その地域差、階級・民族による差異、国家統合との関連など、多くの検討されるべき課題を十分検討することなく行なわれてきたのです。本プロジェクトの目的はこうした現状に鑑み、HIVウィルス感染、少子高齢化、老いなどの問題との関連で、変貌する「家族」をさまざまの角度から、言説と社会学的分析の両面について、分析することにあります。

2006年度より共同研究9「アジア国際経済秩序−歴史的展望」を開始する予定です。

交流の状況・成果

 毎年、約20名のタイ人研究者、その他のアジア諸国から約15名の研究者が当研究所や協力大学を訪れ、これまでの研究結果について、情報交換、共同研究を行なっています。また、これまでにタマサート大学において3回、京都大学において3回のワークショップを開催しました。最近では2005年10月に京都大学において共同研究7と8の共催でワークショップを開催しました。

 本プログラムの実施によって、京都大学東南アジア研究所、タマサート大学(経済学部、東南アジア・プログラム)、チュラロンコン大学(アジア研究所)が、これまでにない東アジア研究のハブとして機能するようになってきました。また、日本の東アジア研究者と、この10〜15年に現われてきた一国研究において第一級の業績を挙げている東南アジアの研究者を中核メンバーとする東アジア地域研究のネットワークが構築されつつあります。

 本プログラム実施の結果、タイにおける東アジア研究は、政治経済研究についてはチュラロンコン大学アジア研究所を中心として、歴史・社会・文化研究についてはタマサート大学東南アジアプログラムを中心として、さらに経済研究についてはタマサート大学経済学部を中心として実施されるようになっています。また、これらの研究活動には、フィリピン、インドネシア、マレーシア、シンガポールなどの社会科学者も参加し、さらに香港、台湾、中国へも研究交流は拡大しつつあります。こうした広域的な東アジア地域研究ネットワークの形成こそが本プログラムの成果なのです。

 本プログラムの成果は、共同研究1と2の研究成果として”After the Crisis, Hegemony, Technocracy and Governance in Southeast Asian”が2005年3月に京都大学学術出版会より出版されました。また、”State, Market, Society, and Economic Cooperation in Asia”が共同研究3の研究報告集として、 “Middle Classes in East Asia”が共同研究4の研究報告集として、そして “Flows and Movements in East Asia” が共同研究5の研究報告集として出版されました。

セミナー・シンポジウム一覧

  1. 日時:平成18年3月6日
  2. 研究会名:日タイ拠点形成事業 ワークショップ 「アジア研究におけるネットワーク理論:成果と今後の課題」
  3. 場所:京都大学東南アジア研究所
  4. プログラム:詳細 (PDF)
  5. コーディネーター:水野広祐(東南アジア研究所)
  1. 日時:平成17年10月14 - 15日
  2. 研究会名:日タイ拠点形成事業 国際ワークショップ "Toward A New Model of East Asian Society: Entrepreneurship and the Family
  3. 場所:京都大学百周年時計台記念館
  4. プログラム:詳細 (PDF)
  5. コーディネーター:水野広祐(東南アジア研究所)