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Center forSoutheast Asian Studies Kyoto University

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科研費プロジェクト

「地方分権化後のインドネシア地方政治の構造再編分析−公共事業に焦点を当てて」
研究代表者:岡本 正明

研究目的
本研究は、分権化後のインドネシアの地方政治の構造と動態を、主要アクターが最も関心を持つ公共事業の立案、実施過程に焦点を当てて実証的に明らかにすることを目的とする。ここで言う公共事業とは土木・建設事業を中心とした行政投資のことである。
具体的な内容は大きく三つに要約できる。まず、スハルト体制期から現在までの公共事業を巡る制度上の変遷を明らかにする。中央集権から地方分権への政治体制の変化は公共事業に関してどのような制度変化をもたらしたのかを公共事業を巡る政治・政策過程も含めてややマクロに検討する。第二に、中央政府と自治体が共同出資する公共事業に焦点を絞り、どのような政策決定過程を経て公共事業が計画・予算付け・事業者選定・実施に至るのかを明らかにする。第三に、自治体管轄の公共事業に焦点を絞り、第二と同様な形で調査を行う。これら三つの研究内容を組み合わせることで公共事業という切り口から分権化後の地方政治構造の再編を明らかにすることが出来る。
調査地は経済構造の異なる首都周辺の都市、地方都市、農村県の3自治体を選択する。経済格差や経済構造の差異が地方政治構造の差異に反映される程度を確認するためである。
業績概要(16年度)
当研究は、分権化後のインドネシアの地方政治の構造と動態を、公共事業の立案、実施過程に焦点を当てて実証的に明らかにすることを目的とする。そのため初年度に当たる今年度は、私自身がこれまでに行ってきた地方政治関連の研究をとりまとめる一方で、これまでに作り上げてきた学者、NGO関係者、新聞記者、官僚とのネットワークを通じて公共事業に関して集めることが可能なデータの収集を試みることにした。まず、国家と社会の関係、地方自治体と社会の関係、或いは政治権力と経済権力の関係について、バンテン州を事例として分析した。
民主化・地方分権化に伴い、インドネシアにおいては国家による社会の統制力が弱まった。その結果、バンテン州の場合、インフォーマルな暴力装置と同業者連合を抑えることで既に一定程度の社会的、経済的権力を獲得していた地方有力者が、暴力と金を背景としてバンテン州レベルの政治権力も獲得することに成功して、州予算による公共事業を恒常的に分捕る仕組みを作り上げていることが分かった。この成果は近く『東南アジア研究』に掲載される予定である。インドネシアの地方政治研究において、公共事業の独占に至る政治過程についてこれほど実証的に分析したものは存在しないので本成果の意義は高い。
その一方、ゴロンタロ州、バンカ・ビリトゥン州、南スラウェシ州でデータを集め始めた。民主化・地方分権化が始まり、情報の開示も進んだと予想していたが、地方レベルでは思ったほど情報開示が進んでおらず、データ収集は困難であった。それでもゴロンタロ州とバンカ・ビリトゥン州において、現在までに5つの州と州内の県・市自治体の予算とその内訳、同業者連合の幹部リストなどは入手することができた。自治体予算の各プロジェクトを誰が獲得したのかについてのデータはまだ十分に集めることはできていない。収集したデータの分析と更なるデータ収集が次年度の課題である。
フィールド調査一覧
  1. 調査期間:平成17年8月10日 - 9月1日
  2. 調査地域:ジャカルタ、ゴロンタロ州、南スラウェシ州
  3. 調査内容:ゴロンタロ州の地方政治調査及び南スラウェシ州タナ・トラジャ県における社会経済調査の実施
  4. 研究者名:岡本正明
  1.  
出版
  1. 著者名:Okamoto Masaaki
  2. 発行年:2004年
  3. 論文標題:Local Politics in Decentralized Indonesia: the Governor General of Banten Province
  4. 雑誌名:IIAS Newsletter
  5. 巻・号:34
  6. 掲載ページ:23
  1. 著者名:岡本 正明
  2. 発行年:2005年
  3. 論文標題:再集権化するインドネシア−内務省による権限奪回とユドヨノ新政権の展望
  4. 雑誌名:インドネシアの将来展望と日本の援助政策
  5. 巻・号:
  6. 掲載ページ:43-56
  1. 著者名:岡本 正明
  2. 発行年:2005年
  3. 論文標題:荒れなかった2004年総選挙−インドネシアにおける「政治と暴力」の歴史をふまえて
  4. 雑誌名:松井和久・川村晃一編著『2004年インドネシア総選挙と新政権の始動−メガワティからユドヨノへ』
  5. 巻・号:
  6. 掲載ページ:200-226
  1. 著者名:岡本 正明
  2. 発行年:2005年
  3. 論文標題:分権・分離モデルから弱い集権・融合モデルへ−新地方分権制度と内務省の勝利
  4. 雑誌名:松井和久・川村晃一編著『2004年インドネシア総選挙と新政権の始動−メガワティからユドヨノへ』
  5. 巻・号:
  6. 掲載ページ:343-362
  1. 著者名:岡本 正明
  2. 発行年:2005年
  3. 論文標題:5年おくれの「改革」−2004年インドネシア・南スラウェシ州におけるゴルカル党の凋落
  4. 雑誌名:アジア研究
  5. 巻・号:51・2
  6. 掲載ページ:62-82
  1. 著者名:岡本 正明
  2. 発行年:2005年
  3. 論文標題:インドネシアにおける地方政治の活性化と州「総督」の誕生−バンテン地方の政治:1998-2003−
  4. 雑誌名:東南アジア研究
  5. 巻・号:43・1
  6. 掲載ページ:3-23
  1.