京都大学東南アジア研究所ナビゲーションをスキップしてコンテンツへ 日本語 | English
サイトマップ | ローカルページ
Center forSoutheast Asian Studies Kyoto University

アーカイブ

科研費プロジェクト

「インドネシア地方分権下の自然資源管理と社会経済変容:スラウェシ地域研究に向けて」
研究代表者:田中 耕司

研究目的
世界各地において急速な地域開発が進むなか、開発をいかに環境保全や自然資源の持続的利用と調和させるかが重要な課題となっている。なかでも、自然資源管理を巡るさまざまな問題が生起しており、関係するステークホールダーが多岐にわたるだけに、この問題に取り組むには学際的手法とともに地域の実情に通暁した研究者・実務家による総合的アプローチが必要となっている。 1998年5月のスハルト体制崩壊後、インドネシア共和国は内外の研究者が予想した以上の大きな政治社会的変動を経験した。民主化改革のなかに地方分権化が位置づけられ政治体制は脱中央集権化しつつあるが、体制移行があまりに急速であったために、地方では既存秩序の解体はみられても新たな政治的・社会的秩序が形成されない状態が続いている。このことは自然資源管理にも及んでおり、新地方自治法では州の下位レベルにある県や市の地方自治体が資源管理主体と位置づけられたにもかかわらず、中央政府省庁・地方自治体・国軍・実業家・地元住民・NGOなどの多様なアクターが管理の仕組みを地域ごとに自生的に作りあげているのが実情となっている。地域によっては、地方分権が環境保全や資源の持続的利用を脅かす事態−地方首長と実業家が結託した資源搾取や、慣習法を盾にした地元住民による資源の占有−が頻発している。他方、さまざまなステークホールダーが対話を通じて自然資源管理の方策を模索する動きも活発になっている。本研究は、主にインドネシアのスラウェシ島に研究の焦点を絞り、このような多様な資源管理の事例をとりあげて、分権下の自然資源管理の様態と地域住民の社会経済生活の変容との関係を学際的・総合的なアプローチにより分析するとともに、これら実証研究の通地域的な検討を加え、より普遍的な自然資源管理のあり方を提示することを目的とする。 スラウェシ島を主な調査地とする理由は以下のとおりである。①東部インドネシアの中核としてインドネシアにおける重要な地域開発対象地域となっている。②森林資源・海洋資源・鉱物資源などの自然資源が多様であり、その利用・管理についてさまざまな試みが現になされている。③研究代表者・分担者ともにスラウェシでの長い調査経験を有しており、当該地域の行政・学術機関や地元住民、NGOなどと広範なネットワークをもつ。
業績概要(16年度)
本研究は、インドネシア・スラウェシ島を対象に、地方分権化後に生起している自然資源管理の変容を地域の社会経済変容との関係のなかで明らかにすることを目的としている。また、協力機関であるハサヌディン大学の研究者との緊密な連携のもとに、スラウェシ地域研究の構築に向けた学際的・総合的アプローチのための方法論の共同開発を目指している。
今年度の研究活動は、国内におけるスラウェシ研究会の立ち上げと研究会の開催、およびインドネシアにおける共同・個別調査の実施からなる。国内においては、スラウェシを対象に研究を行っているさまざまな分野の国内研究者を招き、スラウェシ研究の国内ネットワーク作りに務めた。インドネシアでは、大学院生を含めた日本側研究者8名、ハサヌディン大学側研究者11名からなる共同研究体制を整えた。また、南スラウェシ州を事例に分権化後の自然資源管理に関する広域共同調査を実施し、「山」と「海」というスラウェシ地域理解の基本的構造を理解するために、同州のタナ・トラジャ県およびスプルモンデ諸島を重点的共同調査地として選定した。同時に、周辺地域との人とモノの移動に関する調査をカリマンタンでも実施した。
研究プロジェクトのホームページ(http://sulawesi.cseas.kyoto-u.ac.jp/index.html)を開設し、スラウェシ地域研究へ向けたより広範なネットワークの構築に着手した。また、今年度の成果として、スラウェシにおける地方分権化の現状を踏まえた地方−中央政府間関係や2004年総選挙(岡本)、マングローブ植林地の資源管理問題(田中)、スラウェシおよびインドネシア全体における労使関係(水野)、伝統的木造船を利用した海域研究(遅沢)、地方分権と地域経済発展との関連(松井)、海産物から見た商品経済ネットワーク(赤嶺)などの分析・論考を発表した(準備中を含む)。
フィールド調査一覧
  1. 調査期間:平成17年6月19日 - 24日
  2. 調査地域:南スラウェシ州
  3. 調査内容:ハサヌディン大学と共同調査に関する打ち合わせ
  4. 研究者名:岡本正明
  1. 調査期間:平成17年8 - 9月
  2. 調査地域:南スラウェシ州(インドネシア)
  3. 研究者名:浜元聡子
  1. 調査期間:平成17年8月10日 - 9月1日
  2. 調査地域:ジャカルタ、ゴロンタロ州、南スラウェシ州
  3. 調査内容:ゴロンタロ州の地方政治調査及び南スラウェシ州タナ・トラジャ県における社会経済調査の実施
  4. 研究者名:岡本正明
  1. 調査期間:平成17年8月18 - 9月15日
  2. 調査地域:インドネシア
  3. 調査内容:ウォーラシア海域の生活世界と環境管理の動態的研究
  4. 研究者名:山田勇
  1. 調査期間:平成17年8月23 - 31日
  2. 調査地域:南スラウェシ州トラジャ地方(インドネシア)
  3. 調査内容:住民組織と自然資源管理に関する調査
  4. 研究者名:水野広祐
  1. 調査期間:平成17年9月21 - 27日
  2. 調査地域:南スラウェシ州・マカッサル沖合(インドネシア)
  3. 調査内容:マカッサル沖合にて、サマ人の言語、起源神話、移動史に関する聞き取り調査を実施
  4. 研究者名:長津一史
  1.  
セミナー・シンポジウム一覧
  1. 開催日:平成17年10月22日
  2. 研究会名:第2回スラウェシ研究会 
  3. テーマ:
    (1)「ゴロンタロ州の創設とトウモロコシのポリティクス」
    (2)「地方分権化制度における自然資源管理の位置」
    (3)「小スンダ列島南方海域におけるシンジャイ漁民のカツオ漁の実態と新たな市場形成」
  4. 発表者:
    (1)岡本 正明 (京都大学東南アジア研究所)
    (2)松井 和久 (アジア経済研究所)
    (3)藤田 佳史 (愛媛大学大学院農学研究科修士課程)
  5. 主催:スラウェシ研究会
  1. 開催日:平成17年6月2日
  2. 研究会名:第1回スラウェシ研究会 
  3. テーマ:
    (1) 「地方分権下のスプルモンデ諸島南部地域の経験」
    (2) "Dynamics of the Maritime World of Southern Sulawesi: The Role of Boat and Timber."
  4. 発表者:
    (1)浜元 聡子 (京都大学東南アジア研究所)
    (2) Aziz Salam (愛媛大学大学院農学研究科博士課程)
  5. 主催:スラウェシ研究会
  1.  
出版
  1. 著者名:田中 耕司
  2. 発行年:2005年
  3. 論文標題:地域の資源を誰が利用するのか−『周縁』からの視点
  4. 雑誌名:新崎盛暉・比嘉政夫・家中茂(編)『地域の自立 シマの力(上)』コモンズ
  5. 巻・号:
  6. 掲載ページ:156-180
  1. 著者名:Mizuno Kosuke
  2. 発行年:2005年
  3. 論文標題:The rise of labor movements and the evolution of the Indonesian system of industrial relations: A case study
  4. 雑誌名:The Developing Economies
  5. 巻・号:43(1)
  6. 掲載ページ:190-211
  1. 著者名:水野 広祐
  2. 発行年:2004年
  3. 論文標題:労働者組織の台頭と労使関係制度の展開―インドネシアにおける安定的な労使関係の成立に関する事例研究―
  4. 雑誌名:佐藤百合編『インドネシアの経済再編−構造・制度・アクター』(出版者:アジア経済研究所)
  5. 巻・号:
  6. 掲載ページ:387-425
  1. 著者名:Okamoto Masaaki
  2. 発行年:2004年
  3. 論文標題:Local Politics in Decentralized Indonesia: the Governor General of Banten Province
  4. 雑誌名:IIAS Newsletter
  5. 巻・号:34
  6. 掲載ページ:23
  1. 著者名:岡本 正明
  2. 発行年:2005年
  3. 論文標題:再集権化するインドネシア−内務省による権限奪回とユドヨノ新政権の展望
  4. 雑誌名:(財)国際金融情報センター編『インドネシアの将来展望と日本の援助政策』
  5. 巻・号:
  6. 掲載ページ:43-56
  1. 著者名:岡本 正明
  2. 発行年:2005年
  3. 論文標題:インドネシアにおける地方政治の活性化と州「総督」の誕生−バンテン地方の政治:1998-2003−
  4. 雑誌名:東南アジア研究
  5. 巻・号:43(1)
  6. 掲載ページ:3-23
  1. 著者名:岡本 正明
  2. 発行年:2005年
  3. 論文標題:5年おくれの「改革」−2004年インドネシア・南スラウェシ州におけるゴルカル党の凋落
  4. 雑誌名:アジア研究
  5. 巻・号:51(2)
  6. 掲載ページ:62-82
  1. 著者名:Osozawa Katsuya
  2. 発行年:2005年
  3. 論文標題:Prospects on maritime society studies in relation to the Cinta Laut project
  4. 雑誌名:Jurnal Ecocelebica
  5. 巻・号:1(2)
  6. 掲載ページ:In press
  1. 著者名:遅沢克也
  2. 発行年:2005年
  3. 論文標題:チンタ・ラウト号の建造とその探検航海
  4. 雑誌名:農林統計調査
  5. 巻・号:1月号
  6. 掲載ページ:2-3
  1. 著者名:Akamine Jun
  2. 発行年:2005年
  3. 論文標題:Role of the trepang traders in the depleting resource management: A Philippine case
  4. 雑誌名:Senri Ethnological Studies
  5. 巻・号:67
  6. 掲載ページ:259-278
  1. 著者名:赤嶺 淳
  2. 発行年:2005年
  3. 論文標題:資源管理は地域から―地域環境主義のすすめ
  4. 雑誌名:Tropical Ecology Letters
  5. 巻・号:1-7
  6. 掲載ページ:58
  1. 著者名:赤嶺  淳
  2. 発行年:2004年
  3. 論文標題:小さな鰹節店の大きな挑戦
  4. 雑誌名:藤林泰・宮内泰介編『カツオとかつお節の同時代史―ヒトは南へ、モノは北へ』(出版社:コモンズ)
  5. 巻・号:
  6. 掲載ページ:256-276
  1. 著者名:Akamine Jun
  2. 発行年:2004年
  3. 論文標題:The status of sea cucumber fisheries and trade in Japan: Past and present
  4. 雑誌名:Alessandro Lovatelli et al. (eds.) Advances in Sea Cucumber Aquaculture and Management. (FAO Fisheries Technical Paper 463)
  5. 巻・号:
  6. 掲載ページ:39-47
  1. 著者名:松井 和久
  2. 発行年:2004年
  3. 論文標題:地方分権化後の地方経済とアクター―問われる地方政府の能力―
  4. 雑誌名:佐藤百合編『インドネシアの経済再編―構造・制度・アクター―』(出版者:アジア経済研究所)
  5. 巻・号:
  6. 掲載ページ:347-386
  1. 著者名:Matsui Kazuhisa
  2. 発行年:2005年
  3. 論文標題:Post-decentralization regional economies and actors: Putting the capacity of local governments to the test
  4. 雑誌名:The Developing Economies
  5. 巻・号:43(1)
  6. 掲載ページ:171-189
  1. 著者名:Bannu Abdulsamad and Dadang A. Suriamihardja
  2. 発行年:2004年
  3. 論文標題:Analisis Dampak Interaksi Monsun dan ENSO di atas Benua Maritim Indonesia
  4. 雑誌名:Jurnal Ecocelebica
  5. 巻・号:1(1)
  6. 掲載ページ:1-9
  1. 著者名:M.A. Hamzah and Dadang. A. Suriamihardja
  2. 発行年:2004年
  3. 論文標題:Model Retribusi Pembuangan Limbah Cair Industri
  4. 雑誌名:Jurnal Ecocelebica
  5. 巻・号:1(1)
  6. 掲載ページ:28-39
  1.