第27回 2003年度テーマ
『開かれゆく東南アジア大陸部 −市場経済化の多面性−』
2003年度は9月1日(月)〜5日(金)に開催されました。
内容
大陸部東南アジアは、タイを除き、第二次大戦後の冷戦構造を中心とする複雑な世界情勢の中で度重なる戦乱を経験し、社会主義的政治体制も相俟って「東アジアの奇跡」と呼ばれる旧ASEAN諸国の急速な経済発展からも取り残されてきた。そうした状況に変化があらわれるのは1980年代末以降のことである。べトナム、ラオスでは社会主義を維持したまま市場経済の導入が明確に打ち出され、ミャンマーでも1988年の民主化運動は挫折したものの、装いを新たにした軍政が市場経済化を推進している。1990年代後半にはASEAN10が実現し、現在中国を中心とする東アジアも加わってAFTAを形成し、グローバリゼーションの波が当地域にも否応なく押し寄せようとしている。
またこの地域では長らく自由な調査研究活動が制限され、その実態はヴェールに包まれてきた。それが可能になったのは、つい最近のことである。東南アジア研究センターでは、過去数年、他の研究機関に先駆けるように当該地域でフィールドワークを積み重ねてきた。まだ研究が緒についたばかりであるが、この機会にこれまでの成果を公開し、議論を喚起して今後の課題や方向性を提示したい。
東南アジア研究センターは、自然科学も含むユニークな学際的地域研究機関である。今年度のテーマである「市場経済化」は、狭義の経済的側面に限定するものではなく、その背景にある政治動向、市場経済化に伴うヒト、モノ、カネの移動が惹起する諸問題、すなわち開発と環境の相克、多民族が混住する状況下での複雑な社会文化変容なども射程に入れている。こうした変化のうねりの総体を、異なる専門分野や視点から総合的に考察・議論し、理解を深めるような機会を提供したい。
プログラム
ASEAN10の現状と課題
−大陸部旧社会主義国を中心に |
阿部茂行 |
環境利用史からみた市場経済化のもとでの生業変化 |
田中耕司 |
ミャンマーの市場経済化と農村 |
藤田幸一 |
大陸山地部からみた社会文化変容
−ミャンマーと北タイ |
速水洋子 |
雲南・四川・ミャンマーの生態資源 |
山田勇 |
東南アジア大陸山地部の生態と生業変化 |
安藤和雄 |
ラオスの土地政策と森林利用 |
竹田晋也 (大学院アジア・アフリカ地域研究研究科) |
ラオス北部山岳地帯における経済活動の空間構造 |
横山智 (熊本大学文学部) |
The development situation in Vietnam’s uplands |
テリー・ランボー |
ベトナム・デルタ地帯の農村変容 |
河野泰之 |
ベトナムにおける市場経済化の中の少数民族文化 |
樫永真佐夫
(国立民族学博物館) |
東南アジア大陸部とは何か−
ミャンマーとインドネシアの比較医学調査からの
ひとつの試論 |
松林公蔵 |
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