第28回 2004年度テーマ
『フィールドとの関わり、フィールドへの貢献 −地域研究の多様なアプローチ−』
2004年度は9月6日(月)〜10日(金)に開催されました。
内容
フィールドワークは地域研究の命綱である。私たちは、野心を秘め、希望に燃え、一抹の不安を抱きながらフィールドに入る。そしてフィールドに入った瞬間から、私たちの研究はフィールドの人々・制度・組織・社会・自然との関係の上に成り立つ。関わりである以上、私たちとフィールドの関係は相互的で双方向である。私たちはフィールドで測定し、観察し、話を聞き、資料を収集する。その成果として、私たちは学術論文を書き、書物を著し、そして何よりも自らの考えを深め洞察力を鍛える。フィールドの人々も、自発的であるかどうかにかかわらず、私たちを観察し、私たちと会話する。その結果として、フィールドの人々や社会は何を得ているのか。私たちは、フィールドにどのような貢献ができるのだろうか。
いまや私たちのフィールドとの関わり方は、個人レベルでのつきあいから、国や組織を代表する者としてのつきあいまでさまざまである。多様な関わりの中で、貢献もまた一様ではない。フィールドでお世話になった人々が直面している問題の解決をお手伝いすることもあろう。研究成果を活用して、技術開発に協力したり社会的課題に助言したりすることも考えられる。相手国政府への政策提言は顕著な貢献であるが、私たちがフィールドで吸収した人々の声を世界に向けて発信することもまた貢献である。
多様なアプローチが存在するなかで、いかなる貢献が可能であるのかを考えることは私たちの地域研究をさらに磨いてくれる。自己の研究を他者に役立ててもらおうとする努力は、個別性をより大きな普遍性の中に位置づける営みでもあるからだ。
本セミナーでは、豊富なフィールドワーク経験を積んできた東南アジア研究者を中心とする講師たちとともに、多様化する国と国、社会と社会、人と人のつきあいの中で、私たちがどのようにフィールドと関わり、フィールドへ貢献しているのかについて真摯に議論したい。私たちとフィールドの多様で永続的な関係が、地域研究をより魅力的なものにしている姿が見えてくるはずである。
プログラム
マクロ政策 −大統領とのつきあい− |
白石隆(CSEAS) |
農村レベルのアクションプラン
−バングラデシュの農村開発− |
安藤和雄(CSEAS) |
人と地域を繋ぐフィールドワーク
−住民・よそ者・在地研究者− |
林行夫(CSEAS) |
少数民族の脱周辺化とアイデンティティの多様化 |
速水洋子(CSEAS) |
トヨタ財団の30年
−現地研究者による文化保護支援− |
姫本由美子(トヨタ財団) |
アンコール遺跡の保存と人材育成 |
丸井雅子(上智大学) |
バリにおける歴史意識への介入 |
永渕康之(名古屋工業大学) |
地方分権を根付かせる |
松井和久
(ジェトロ・アジア経済研究所) |
海原をわたる風になろう
−チンタ・ラウト号建設とその探検航海− |
遅沢克也(愛媛大学) |
フィリピン・ミンダナオの国際支援 |
P・N・アビナレス(CSEAS) |
感染症ルート解明と地域の研究者ネットワーク |
西渕光昭(CSEAS) |
地域の仲間・出戻り・よそ者による協力のネットワーク |
中村尚司(龍谷大学) |
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